中学生作家、鈴木るりかの2作目の作品。
「一時間目 国語」「二時間目 家庭科」というように学校の時間割形式になっている7つの短編集。とても読みやすく、クスっと笑えるユーモアもあり、非常におもしろく一気に読んでしまった。どの話もリアルで考えさせられた。多少は作者の実体験も入っているのかな? すべての話に中原君という生徒が登場し物語のキーマンになっているのだが、非常に作り方がうまいなと思った。
どの話もおもしろかったが、個人的には、「一時間目 国語」「昼休み」「放課後」の3作が特に好きだ。「一時間目 国語」は中学生作家が主人公という私小説を思わせる作品。作者の心情と決意表明が書かれているように感じ胸を打たれた。今後の長い作家人生のプロローグ的な作品じゃないかなと個人的には思う。この作品は通学途中に降ってきたらしい。潜在意識の叫びなのかもしれない。だから強く心に響くのだと思う。
「昼休み」は友達のいない孤独な少女を書いた作品。かなり感情移入、共感できた(笑) 「結婚するのは〇〇のような人だったとしても、死ぬ間際に思い出すのは~」の文章のくだりは中学生でもこんなことを考えてるんだと驚き印象に残った。
「放課後」は、他の話は中学生が主人公なのだがこの作品のみ大人の教師が主人公の話。編集者さんからの「大人が主人公の話もほしい」というリクエストに答えた作品らしい。大人はいつまで夢をみていいのかの問いに中学生の作者が答えている。「放課後」=「大人」ということか。ちょっと泣いてしまった。この話が最後にあることで短編集がしっかり締まったという感じがする。
私は自分大好き人間なのか、自分が好きな作品に出会うと、その作品を好きだなと思うと同時にこの作品を好きと思える自分でよかったなと思い自分のことが少し好きになる。だから自分が好きな作品を作ってくれた作者には心からありがとうと思う。
次回作も読ませてください。楽しみに待ってます。(中原君風に)